専門医からのメッセージ

専門医からのメッセージ

好酸球こうさんきゅうなどがもたらす気道炎症を抑えて
健康な人と変わらない日常生活を

近畿大学病院 病院長 東田 有智(とうだ ゆうぢ)先生

近畿大学病院 病院長 
東田 有智(とうだ ゆうぢ)先生

大阪府のアレルギー疾患医療拠点病院である近畿大学病院の病院長として、地域に根差したぜん息・アレルギー医療に取り組む東田先生。日本アレルギー学会の理事長や、日本アレルギー協会の理事・関西支部支部長も務めていらっしゃいます。

適切な治療で、ぜん息のない人と同じ生活も

――ぜん息をコントロールできないケースは多いのですか?

「夜眠れない」「仕事を休まざるを得ない」「家事を中断してしまう」「発作が怖くて外出や旅行をためらう」など、ぜん息がもたらす日常生活のお悩みをよく聞きます。そうした制約を仕方がないものと、あきらめてしまう方も少なくありません。

――よい解決策はあるのでしょうか?

近年、ぜん息が起こるメカニズムが解明され、その治療法は大きく進歩しました。治療の目標は今や、ぜん息のない人と変わらない日常生活を送れるようにすることとされるまでになっています。「仕方がない」と思わずに適切な治療をすれば、健康な人と同じように仕事や趣味を十分に楽しめるようになる場合もあるので、ぜひ、ぜん息医療の専門医にご相談いただきたいと考えています。

気道の炎症を抑えることが、ぜん息治療の基本

――そもそもぜん息ってどんな病気ですか?

ぜん息は慢性的な炎症によって気道が狭くなる病気です。この炎症は、好酸球やリンパ球などのさまざまな免疫細胞が中心となって生じています。とりわけ好酸球は、ぜん息に対して悪玉であることが近年の研究でわかってきました。ぜん息の治療では、こうした物質の働きを抑え、症状の急な悪化(発作)を起こさないことが大切です。

――具体的な治療法を教えていただけますか?

現在、多くのぜん息患者さんが治療に使っている吸入ステロイド薬は、気道の炎症に直接作用し、少ない用量で炎症をもたらす物質やそれによる炎症を鎮めます。吸入ステロイド薬できちんと治療すれば、90%以上の患者さんは症状のコントロールができるようになるとされています。ぜん息治療で大切なことは、この薬を毎日きちんと服用し続けることです。息が苦しくなったときにだけ発作止めの薬を吸入していたり、症状がないからと自分だけの判断で薬を中断したりすると、ぜん息の悪化につながります。

――吸入ステロイド薬だけでコントロールできないときは?

従来の治療や経口ステロイド薬のたび重なる使用、さらには予定外の受診、入院が必要となるような重症ぜん息の患者さんには、従来の治療薬に加え、他の治療選択肢が検討されます。そのひとつが「生物学的製剤」で、ピンポイントで原因物質に効果を発揮するのが特徴です。従来の治療薬と新たな生物学的製剤などの組み合わせにより、今後ますます多くのぜん息患者さんが、治療の目標を達成できるようになるでしょう。

治療に関する正しい情報を入手してほしい

――患者さんが心がけるべきことは何でしょうか?

吸入ステロイド薬を基本とした治療をきちんと行っていてもぜん息のコントロールが難しいときの原因はさまざまです。患者さんご自身が、ぜん息がいまどのような状況にあるのかを把握することで改善への道が開けることもあります。ぜん息症状のために生活に何らかの障害や不安を感じる方、なかなか症状が改善しないと感じている方は、専門医や拠点病院を一度受診するのも良いでしょう。

――最後に患者さんへのメッセージをお願いします

ぜん息は、きちんと治療すれば良くなる病気です。病状に応じた治療法も相次いで開発されています。一人でも多くのぜん息患者さんが自分のぜん息症状を正しく理解し、正しい情報に基づいた治療を行って、健康な人と変わらない日常生活を送れることを願っています。

専門医からのメッセージ

一人ひとりの症状に合った個別化医療が
患者さんの生活の質の改善につながります

藤田医科大学ばんたね病院 副院長 同大学総合アレルギーセンター長 同大学医学部呼吸器内科学Ⅱ講座教授 堀口 高彦(ほりぐち たかひこ)先生

藤田医科大学ばんたね病院 副院長 同大学総合アレルギーセンター長 同大学医学部呼吸器内科学Ⅱ講座教授
堀口 高彦(ほりぐち たかひこ)先生

愛知県アレルギー疾患医療拠点病院の藤田医科大学ばんたね病院で、同大学総合アレルギーセンターのセンター長を務める堀口先生。ぜん息治療の第一人者として、アレルギー疾患の悪化要因の精査や、重症・難治性ぜん息の治療に取り組んでいらっしゃいます。

ぜん息患者さんは、自分の症状を軽視する傾向に

――患者さんは、どんなことにお困りですか?

「仕事にいけないほど咳が出る」「映画館など静かな場所で咳の発作が起こる」「夜中の咳で寝ている家族が目覚めてしまう」など、日常生活で周りの人に心配や迷惑をかけてしまうことを気にかけて、不安に過ごしているぜん息患者さんがたくさんいらっしゃいます。ところが一番苦しいときが過ぎてしまうと、診療時に状態を尋ねても「問題ありません」と答えられるんですね。本当は症状が残っているのに……。

――どのように、先生に相談したらよいのでしょうか?

一番苦しい状態と比べたらましだから、と思っても遠慮せずに、なんらかの症状があるときはしっかり医師につらいときの状況を伝えてほしいです。手帳にメモしておいたり、携帯に打ち込んでおいたりしてもいいかもしれません。「自分の状態にあった適切な治療を行えば、健康な人と変わらない日常生活を目指すことができる」、そのことをすべてのぜん息患者さんとそのご家族に知っていただきたいと思います。

治療の基本は、継続的に気道の炎症を抑えること

――どのように、先生に相談したらよいのでしょうか?

ぜん息は症状がないときも気道に慢性的な炎症があり、それによって気道が狭くなります。この慢性気道炎症は好酸球やリンパ球などのさまざまな免疫細胞が中心となって生じています。なかでも好酸球は、ぜん息に対して悪玉であることが研究で分かりはじめ、ぜん息の状態を把握するための指標として参照されるようになっています。ぜん息治療の基本は、こうした物質の働きを抑え、症状の急な悪化を起こさないことです。

――どんなお薬が使われていますか?

主に、気道の炎症を抑える作用のお薬と、気管支を拡げる作用のお薬があります。現在、多くの患者さんが使っている吸入ステロイド薬には、少ない用量で気道の炎症を抑える作用があり、きちんと継続的な治療ができていれば、90%以上の患者さんが症状をコントロールできるようになるとされています。息が苦しくなったときにだけ気管支を拡げるお薬を吸入していたり、症状がないからと自分の判断でお薬の使用をやめたりしていると、ぜん息が悪化してしまう可能性があるため、気道の炎症を抑えるお薬を毎日服用し続けることが大切です。

――症状が抑えられない、残り10%の患者さんには?

まずは吸入指導やお薬の追加を検討します。それでも発作をくり返し、予定外の受診や入院が必要となる重症の患者さんには、他の治療選択肢を検討します。そのひとつとして「生物学的製剤」というお薬があります。これは気道炎症をひき起こす原因物質だけをターゲットにして、他の細胞には作用しないのが特徴です。ぜん息の原因や特徴に合わせた個別化医療を行うことで、患者さんの生活の質が改善され、ご家族や周囲の方の安心にもつながっていくと考えています。

患者さんとお医者さんの信頼関係が大切

――最後に患者さんへのメッセージをお願いします

私自身について言えば、長い経過を診るぜん息治療では、ご家族や親せきになったつもりで患者さんと向き合っています。一緒に治療を進めて苦しい状況を乗り越えると、お互いの信頼関係が自然と生まれてきて、その後の治療も良い方向に進むように思います。ぜん息は、病状に応じてきちんと治療すれば良くなる病気です。自分のぜん息症状を正しく理解し、正しい情報に基づいた治療を受けて、一人でも多くのぜん息患者さんが健康な人と変わらない日常生活を送れることを願っています。

専門医からのメッセージ

長くぜん息を患ってきた患者さんが
発作のない生活を送れるようになったケースも

三菱京都病院 顧問 呼吸器・アレルギー内科 安場 広高(やすば ひろたか)先生

三菱京都病院 顧問 呼吸器・アレルギー内科 
安場 広高(やすば ひろたか)先生

京都府全域から北大阪まで、広い地域の患者さんが訪れる三菱京都病院の顧問として、ぜん息・アレルギー疾患の患者さんに専門的な診療を行っている安場先生。とくに、上気道・下気道の総合的な改善や重症・難治性ぜん息の治療に力を尽くしていらっしゃいます。

ぜん息の症状は、発作のくり返しで悪化します

――ぜん息の発作は何がきっかけで起こるのですか?

まず知ってほしいのは、ぜん息は症状がないときも気道に慢性的な炎症があることです。このため、気温や気圧のちょっとした変化、ホコリや煙などに気道が過敏に反応して、咳や息苦しさを引き起こします。たとえ発作が治まっても安心できません。実は気道が、発作を起こす前の状態まで回復していないことが多いからです。

――気道が回復していないとどうなりますか?

たとえば年1回だった発作が2回3回とくり返し起こりやすい状態になります。発作をくり返すほど気管支がだんだん狭くなり、炎症が強くなって悪化するため、さらに発作が起こりやすくなるという悪循環に陥ります。

発作のない生活は、病状に合った治療の継続から

――発作を起こさないために重要なことは?

まず、気道の炎症を抑える治療を続けることです。そのために吸入ステロイド薬を中心に、気管支を拡げる作用のあるお薬などを一緒に使っていきます。その際に注意しなくてはいけないのは、きちんとした方法でお薬を吸入すること。そして、症状がなくなったとしても自分の判断で中止せず、毎日続けることです。歯磨きのように生活習慣として取り入れることが、症状のコントロールを図るうえでとても大切です。

――吸入ステロイド薬でもコントロールできないときは?

吸入ステロイド薬を続けて使っても週に1回以上夜間のぜん息症状や咳や息苦しさがなくならない場合は、ぜん息がコントロールできていない状態である可能性があります。その場合はその他の治療選択肢を追加します。その他の治療法の1つに、「生物学的製剤」という選択肢があります。これは、ぜん息の気道炎症の原因物質だけに働きかけ、他の細胞には作用しないお薬です。
気道炎症には、血中の好酸球やリンパ球、さまざまな免疫細胞などが複雑に関わっていることが近年解明されました。とりわけ好酸球は、ぜん息に対して悪玉であることがわかりはじめ、病状を把握するための指標としても用いられるようになってきました。

まずは身近なお医者さんにご相談ください

――ぜん息治療はずいぶん進歩しているのですね?

以前は当院でも、ぜん息の発作で入院する方が30~40人いらっしゃいましたが、現在はほとんど見られなくなりました。長くぜん息を患ってきた方が、発作のない生活を送れるようになったケースもあります。ただ、どんな方も生活習慣や治療方法を変えるのは不安なものです。私はいつも患者さんに新しい提案をするときは、パンフレットなどを渡してしっかり説明し、安心感をもってもらえるよう心がけています。

――最後に患者さんへのメッセージをお願いします

発作が年に1回でも起きている方、あるいは発作がなくても不安な方は、まずはかかりつけの先生に相談してみてください。ぜん息やアレルギーの専門医を紹介してもらうのもよいでしょう。ぜん息は、きちんと治療すれば良くなる病気です。自分の症状を正しく理解し、正しい情報に基づいた治療を行うことで、一人でも多くのぜん息患者さんが健康な人と変わらない生活を送れることを願っています。

専門医からのメッセージ

「健康な人と変わらない生活」こそが
患者さんと医師がともに目指すべきゴールです

筑波大学 医学医療系 呼吸器内科 教授 檜澤 伸之(ひざわ のぶゆき) 先生

筑波大学 医学医療系 呼吸器内科 教授 
檜澤 伸之(ひざわ のぶゆき) 先生

檜澤先生は、茨城県の呼吸器診療を支える筑波大学附属病院・呼吸器内科で重症ぜん息を含め数多くのぜん息患者さんの診療にあたる、ぜん息治療のエキスパートです。長年、ぜん息を含むアレルギー疾患の研究に携わり、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医なども務めていらっしゃいます。

治療の目標は、健康な人と変わらない生活です

――ぜん息患者さんは、どんなことにお困りですか?

患者さんの訴える症状はさまざまですが、とくに多いのは咳と息苦しさですね。重症の場合は、息苦しさがなくならず、ひどい咳や急な症状の悪化によって「仕事が普通にこなせない」「学校に通えない」「外出をためらう」など、日常生活が大きく制限されてしまうことがあります。また、患者さんの睡眠に影響を与えることもあります。こうした状況を「ぜん息だから仕方ない」と思ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

――そういった状況が改善される見込みはありますか?

ぜん息の治療はこの10年で大きく進歩しています。治療の目標が「健康な人と変わらない日常生活が送れること」とされるまでになりました。トップアスリートのなかにもぜん息の方がいることをご存知でしょうか。彼らはぜん息があっても、世界を舞台に活躍を続けています。言い換えれば、適切な治療を受けることによって、運動をしても問題がない状態にまでなれる可能性があるということなのです。

治療の基本は、気道の炎症を抑えることです

――ぜん息の治療方法について教えてください

ぜん息は気道が慢性的に炎症を起こして狭くなる病気です。そのため、炎症を抑える吸入ステロイド薬をベースとして、気道が狭くなった際には気道を拡げる気管支拡張薬も使用します。このような治療をきちんと行うことで、多くの患者さんの症状はコントロールできるのですが、症状がおさまらない場合には、吸入ステロイド薬がきちんと吸えているか、症状が少しおさまったからといって吸入をやめてしまっていないかなど、もう一度確認することも大切です。

――気道の炎症は、どのようにして起こるのですか?

主に好酸球やリンパ球などの免疫細胞が気道を傷つけてしまうことによって起こっています。症状が出ていなくても炎症は続いているため、治療を継続することが非常に重要です。禁煙する、ペットとの生活環境を見直す、鼻炎・副鼻腔炎などを合併していないかを確認し治療する、といったことが必要になる場合もあります。

ぜん息治療にはさまざまな選択肢があります

――従来使っている薬剤だけでコントロールできないときは?

吸入ステロイド薬を続けて使っても、週に1回以上夜間のぜん息症状や咳がなくならない場合は、ぜん息がコントロールできていない状態である可能性があります。その場合は、他の治療選択肢を検討します。治療選択肢の一つに、好酸球など、気道の炎症の原因となっている物質をターゲットにして働き、原因物質以外の細胞には作用しない「生物学的製剤」というものがあります。ぜん息にはさまざまなタイプがあり、患者さん一人ひとりで症状や原因が異なります。基本的な治療でぜん息の症状が取れない患者さんが自分に合った治療方法を見つけるうえで、生物学的製剤という治療の選択肢が増えたことは朗報ではないでしょうか。

――最後に患者さんへのメッセージをお願いします

ぜん息治療の目標は「健康な人と変わらない生活が送れること」であり、これは患者さんと医師がともに目指すべきゴールです。吸入ステロイド薬や気管支拡張薬で継続して治療していても、普通の生活に到達していないと感じられる患者さんは、かかりつけの先生に一度ご相談のうえ、呼吸器専門の病院、ぜん息やアレルギーを専門とする病院を受診していただきたいです。夜ゆっくり寝られる、運動しても発作が起こらない、どこにでも気兼ねなく外出できるなど、一人でも多くのぜん息患者さんが病気を意識しないで日常生活を送れるようになることを願っています。

専門医からのメッセージ

ぜん息症状で生活に支障をきたしている方は
一歩踏み出して、専門医の受診を

岡山ろうさい病院 副院長 金廣 有彦(かねひろ ありひこ)先生

岡山ろうさい病院 副院長 
金廣 有彦(かねひろ ありひこ)先生

金廣先生は、地域の基幹病院である岡山ろうさい病院の副院長にして呼吸器疾患のエキスパートです。岡山大学医学部医学科臨床教授、日本アレルギー学会理事、日本アレルギー学会 喘息予防・管理ガイドライン、日本呼吸器学会 難治性喘息診断と治療の手引き2019作成委員を務められています。

ぜん息のない人と変わらない生活を目指してほしい

――先生のところにいらっしゃる患者さんは、どんな症状にお困りですか?

咳や痰、息切れなどのぜん息症状をコントロールできずに受診される患者さんが少なくありません。ぜん息症状は一言でいうと「息苦しくて辛い」というもので、とくに夜間の症状がきつくて眠れないと訴える患者さんがたくさんいらっしゃいます。

――そういった状況が改善される見込みはありますか?

近年、ぜん息の治療法は大きく進歩しました。適切な治療を受けることで、以前はコントロールが難しかった症状も改善でき、ぜん息のない人と変わらない生活を目標にできるようになっています。ぜん息症状のせいで日常生活に支障を感じている患者さんには、それを治療する方法があることを知っていただきたいと思います。

気道の炎症を抑えることが治療の基本です

――ぜん息の治療法について教えてください

ぜん息は慢性的な炎症によって気道が狭くなる病気です。炎症がある気道は敏感になっていて、わずかな刺激でも狭くなりやすい状態です。治療の基本は気道の炎症を抑え、気道が狭くなるのを防ぐことです。症状のコントロールと急な症状の悪化の予防を目指します。

――治療には、どのようなお薬が使われますか?

ぜん息の治療には主に気道の炎症を抑える作用のお薬と、気管支を拡げる作用のお薬が使われます。基本的な治療とされている吸入ステロイド薬は気道の炎症に直接作用し、90%以上の患者さんが症状をコントロールできるようになるとされています。大切なことは、お薬を毎日きちんと服用し続けることです。息が苦しくなったときにだけ発作止めのお薬を吸入していたり、症状がないからと自分だけの判断でお薬の使用を中断したりすると、ぜん息の悪化につながります。

まずは、医師とのパートナーシップと自己管理を

――症状が残ってしまう場合は、どうしたらいいでしょうか、

吸入ステロイド薬を使っていても発作が起き、ステロイドの飲み薬や緊急受診・入院などが必要となる患者さんが、私がみているなかにも2割程度いらっしゃいます。そのような患者さんには他の治療方法の追加が検討されますが、そのひとつが「生物学的製剤」です。これは、気道炎症の原因となる好酸球やリンパ球などの免疫細胞だけをターゲットにするもので、重症ぜん息の患者さんに対する治療選択肢が広がりました。

――最後に患者さんへのメッセージをお願いします

発作を起こさず、症状がない状態を維持することを目指すうえで、患者さんが負担に感じることなく継続できる、適切なお薬を選択することが重要です。そのためにはまず、医師と患者さんのコミュニケーションが欠かせません。病状に応じた治療の選択肢は増えています。現在、何らかの症状があって、生活に支障をきたしている方は、ぜひ一歩踏み出して、ぜん息治療の専門医を受診していただきたいと思います。一人でも多くのぜん息患者さんが、健康な人と変わらない日常生活を送れることを願っています。

専門医からのメッセージ

空気がもっと楽に、たくさん入ってくる世界を
ぜひ患者さんに実感してほしい

広島アレルギー呼吸器クリニック 統括院長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀 院長 保澤 総一郎(ほざわ そういちろう)先生

広島アレルギー呼吸器クリニック 統括院長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀 院長
保澤 総一郎(ほざわ そういちろう)先生

保澤先生は、広島において、日々多くの患者さんの診療にあたるぜん息治療のエキスパートです。日本アレルギー学会 喘息予防・管理ガイドライン作成委員、日本アレルギー協会評議員も務めていらっしゃいます。

ぜん息は10人に1人が患う、よくある病気です

――ぜん息とは、どのような病気でしょうか?

ぜん息は人口の約10%にみられる病気で、あらゆる年齢層で発症します。患者さんからの訴えでよく聞くのは、夜、咳が止まらない、呼吸音がゼーゼーするといった夜間症状です。気道上皮にダメージを受けているためウイルスが侵入しやすく、風邪をひきやすくなります。風邪をひくとぜん息の状態も悪くなるという悪循環に陥って、仕事や家事などが思うようにできず、ストレスを溜めこんでしまうことにもなります。
患者さんが比較的若く、社会的にアクティブな年齢の方が多いこともぜん息の特徴です。そのため、仕事の都合で受診しにくいなど、慢性疾患でありながらなかなか治療に結び付きにくい、あるいは治療が続かないという問題もあります。

治療の基本は、気道の炎症を抑えること

――どのようなメカニズムで、ぜん息にかかるのですか?

ぜん息は慢性的な炎症によって気道が狭くなる病気です。この炎症は好酸球やリンパ球などのさまざまな免疫細胞が中心となって生じており、とりわけ好酸球がぜん息に対して悪玉であることが近年の研究で分かってきました。好酸球の働きが活発になって暴走し傷つけた気道が、非常に敏感になって症状が悪化してしまう、というわけです。

――ぜん息の治療法について教えてください

主な治療薬として、気道の炎症を抑える作用のお薬と、気管支を拡げる作用のお薬があります。現在、多くのぜん息患者さんが使っている吸入ステロイド薬は、気道の炎症に直接作用し、少ない用量で、炎症をもたらす物質やそれによる炎症を鎮めます。吸入ステロイド薬でも症状をコントロールできない患者さんや、吸入薬をうまく使えないために効果が得られない患者さんには、改めて服薬指導をして吸入薬の効果が得られるようにします。

――吸入ステロイド薬だけでコントロールできないときは?

高用量のステロイド薬などを使っても症状のコントロールが不十分であったり、救急搬送や入院が必要となったりする重症ぜん息の患者さんに対する治療方法には、気道炎症をひき起こす物質のみをターゲットにする「生物学的製剤」という選択肢があります。病状に合わせて適切な治療薬を選べば、より早く症状のコントロールを得ることが期待できます。

ぜん息の専門医にご相談を

――最後に患者さんへのメッセージをお願いします

ぜん息の患者さんは、さまざまな症状や生活の支障があっても、これぐらいは仕方ないとあきらめている場合もあるようです。そのような方でも、症状が改善する可能性はありますので、もっともっと空気が楽に、たくさん入ってくるような世界があることを実感していただきたいと思います。治療を受けてはじめて「こんなに楽になるとは思わなかった」といった患者さんの声もよく聞きます。まずはご自身のぜん息の状態を正確に知るために、ぜん息の専門医のところで一度検査を受けてみるのもいいかもしれません。そのうえで、専門医にぜん息治療について相談していただければと思います。

専門医からのメッセージ

患者さんが自らのぜん息の状態をよく知り
治療を継続することが大切です

国立大学法人 山口大学大学院医学系研究科 呼吸器・感染症内科学講座 教授 松永 和人 (まつなが かずと) 先生

国立大学法人 山口大学大学院医学系研究科 呼吸器・感染症内科学講座 教授
松永 和人 (まつなが かずと) 先生

地域の基幹病院である山口大学医学部附属病院の副病院長であり、ぜん息・呼吸器疾患の診断・治療・研究に取り組む松永先生。日本アレルギー学会代議員、アレルギー疾患ガイドライン委員会喘息ガイドライン専門部会作成委員も務めていらっしゃいます。

ぜん息の検査や治療は着実に進歩しています

――ぜん息患者さんは、どんなことにお困りですか?

ぜん息は、患者さんの日常生活にさまざまな影響を及ぼします。よく聞く訴えは「夜間や明け方に咳が出て眠れない」、「息苦しくて身体を動かすことが制限される」などです。やりたいことをしようとすると辛くなるからそれを我慢する、あるいは、そういう状態に慣れてしまって、やりたいことを諦めてしまう方も多いでしょう。

――そういった状況が改善される見込みはありますか?

ぜん息の検査や治療方法は着実に進歩しています。10年前には分からなかったことが解明され、これまで治療できなかった方が治療できる、そういう時代になってきているのです。私たち医師は、患者さんがどういった生活の場面で困っておられるかを把握し、患者さんが今できなくて困っていることができるようになることを、ともに目指したいと考えています。

治療の基本は、気道の炎症を抑えることです

――どのようなメカニズムで、ぜん息にかかるのですか?

ぜん息は慢性的な炎症によって気道が狭くなる病気です。このため、呼吸が苦しくなったり、息をするとゼーゼー、ヒューヒューといった音がしたりします。この炎症は、好酸球やリンパ球などのさまざまな免疫細胞が中心となって生じています。なかでも好酸球は、ぜん息に対して悪玉であることが近年の研究で分かってきました。ぜん息の治療では、こうした炎症をもたらす物質の働きを抑えることが基本となります。

――治療で使う薬には、どんなものがあるのでしょうか?

主として使われるのは、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬と、狭くなってしまった気道を拡げる気管支拡張薬です。こうしたお薬を続けて使うことで炎症が鎮まると、咳や息切れなどの症状や、急な症状の悪化も生じにくくなります。生活上の制約が減って、夜よく眠れるようになる、身体がだるくなくなるなどの変化が起きてきます。

――従来のお薬だけでコントロールできないときは?

従来のお薬では症状が改善しない患者さんもおられます。そうした重症ぜん息の方は、炎症をひき起こす免疫細胞が気道で暴走している場合があります。気管支も狭くなっていて、急に息が苦しくなる、明け方辛くなって目を覚ましてしまうなどの症状が出やすくなっています。その場合、行っている治療に加えてその他の治療選択肢が検討されます。その治療選択肢の一つに、「生物学的製剤」というものがあり、この「生物学的製剤」は、気道炎症をひき起こす原因物質だけをターゲットにするお薬です。それ以外の細胞には作用せず、ピンポイントで効果を発揮します。結果として、従来の治療では気道の炎症が残ってしまうような重症ぜん息の患者さんにとって、治療の選択肢が広がりました。

まずは、ご自身のぜん息の状態をよく知ること

――最後に患者さんへのメッセージをお願いします

ぜん息は高血圧や糖尿病などと同じく慢性の疾患です。生活への負荷を限りなく減らしつつ急な症状の悪化を防ぐためには治療の継続が必須であり、患者さんがご自身のぜん息の状態をよく知っていることが重要です。近年、ぜん息検査の進歩によって検査法も簡便になり、入院のいらない日帰り検査も可能となっています。検査結果や日常生活を通じて治療の効果を実感していただくことは、治療継続の大きなモチベーションにつながるでしょう。ご自分のぜん息治療をもう少しよくしたいとお考えの方は、かかりつけの先生にぜひ一度ご相談のうえ、専門医を受診していただければと思います。

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    同大学総合アレルギーセンター長
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    堀口 高彦(ほりぐち たかひこ)先生

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  • 広島アレルギー呼吸器クリニック統括院長
    広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀院長
    保澤 総一郎(ほざわ そういちろう)先生

  • 国立大学法人 山口大学大学院医学系研究科
    呼吸器・感染症内科学講座 教授
    松永 和人 (まつなが かずと) 先生

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